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エジプト革命の関門

現在(2011/02/02)、デモ隊はますます勢いを増し、暫定政権の樹立も間近に見える。しかし、暫定政権の樹立までも、その後も、様々な関門がデモ隊=虹の連合を待ち受けている。
これから、その『困難さ』を書いていくが、エジプト人が待ち受ける多くの試練を乗り越え、次の時代の民主主義を切り開いてゆくのを願っている。




ムバラク政府の抵抗
 首都のみならず、各都市で大規模なデモが発生し、ムバラク政権は外国からも見放されつつあるが、ムバラク大統領はその地位を退く構えはない。苦境に陥っているように見えるムバラク政権だが、ムバラク大統領から見ると、まだ勝ち目はある。

 まず、デモ隊の体力・経済力は無限ではない。なので、デモ隊を体力的に或いは経済的に疲弊させて、デモ隊を解散させればそこでムバラクの勝ちである。
また、陸軍の動きは極めて不透明であり、デモ隊に好意的中立ではあるが、ムバラク政権と決定的対立をしているわけではなく、ムバラク政権は装備こそ陸軍には劣るが人数は陸軍に匹敵する中央保安軍(=治安部隊)と、警察を支配下に収めているため、軍事力の観点から見るとムバラク政権にまだ分がある。
更に言うと、周辺国、特にヨルダン、スーダン、シリア、イスラエルはこの革命が成功することを非常に恐れている。そのため、有形無形の支援がムバラク政権を支えることになる。

 以上の理由から、ムバラクの引き伸ばし作戦は、一見無駄のように思えるが、『政権にしがみつく』という一点だけから考えてみるとその戦略は極めて正しいものになる。
しかし、その引き伸ばし作戦によってエジプト人の庶民はその経済と生活に甚大なダメージをこうむることになる。特に、ネット完全遮断政策は、海外との商業的な断絶を意味し、生活の隅々にまで影響を与える。そういう観点から考えると、ムバラクは(知ってか知らずか)国民生活を人質に取っている。為政者としてはやってはならないことに手を出していると言えよう。




暫定政府内部の不一致
 ムバラクを倒した後にも当然、困難が付き纏ってくる。いや、ここからがむしろ本番であると言わざるを得ない。
デモ隊=野党連合=虹の連合(rainbow coalition)は、幾多の市民と政治勢力で構成されている。イスラム主義、社会主義、世俗主義、そしてコプト教徒(キリスト教)といった思想・宗教の対立を超えてようやく成ったのが今回のデモである以上、各思想・政治勢力の対立が深刻になるだろう。新たに樹立されるであろう暫定政権は、各政治勢力間のバランスを取りつつ、民生を回復させると言う難事業に取り組まなければならない。

 無論、ムバラク後を見据えて動いている『虹の連合』は、その対策に乗り出している。詳しくは『エルバラダイ氏推戴の意味』にも書いたが、どの政治勢力にも属さず、それでいて大方の人間に名前が浸透し、許容でき、交渉能力もそこそこあるエルバラダイ氏を暫定政府のトップに据えようという考えは正しく、各勢力が彼を支える限り、『虹の連合』がバラバラになって終わるという結果は避けられるだろう。




軍との関係
 上に書いたように、暫定政府は内部で問題を抱えるため、決して強い政府にはならない。また、エジプトの軍はアフリカでも最大クラスであり、国防省管轄の諸軍を合わせると、40万人ほどになる。そのため、軍=国防省が望めば、極めて大きな発言権を得ることが出来る。そうなれば、当初の目標である『民主化』から程遠い政権が出来ることになり、折角ムバラク政権を倒して得た自由も霧消してしまう恐れがある。そのため、軍の発言権を極力抑える政治機構づくりをしなければんらない。




治安部隊やムバラク派の処分
 デモ隊の一部には『ムバラクを殺せ』と叫ぶ者も居るが、ムバラクを殺すということであれば、ムバラクはそれこそその物狂いに抵抗するだろう。それと同じように、ムバラクに付いた者、ムバラクの政策で恩恵を受けた者に対して、あまりに厳しい態度を取れば、それは内乱の元になるだろう。特に、中央保安軍や地方の保安軍、警察は、例えその武力を取り上げたとしても、一定の訓練を受けた集団であり、完全に敵に回すとなれば、厄介な集団となるだろう。
よって、彼らから特権を剥奪した後は、一般国民と同じように扱わなければならない。

 無論、旧ムバラク派をスケープゴートにすることで、『虹の連合』を結束させるという方法も取れなくもないが、『民主化』の理想からは程遠くなるし、内乱の素となるだろう。





イスラム主義・イスラム過激派
 暫定政権がイスラム過激派国家になる可能性は今のところ少ないと言える。エジプトはアラブ人の国家であり、イスラム教徒が大半であるが、イスラム過激派がそれほど広範な支持を受けているわけではないからだ。

 しかし、イスラム主義者の扱いには十分注視しなければならない。組織化されていない市民や、あまり大きくない政治団体が多数ある『虹の連合』の中で、唯一大組織と言えるのがムスリム同胞団であり、その思想は戦闘的ではないが、原理主義的な傾向を持つ。そのため、暫定政権がイスラーム主義との距離の測り方を間違えた場合、イスラーム主義に乗っ取られる、或いはイスラーム主義者が離反し、過激派になるといった結末が考えられるため、暫定政権は常に難しいバランス感覚が求められることになる。



外交的問題
 暫定政権を円滑に運営するためには、海外からの有形無形の承認と支援は必須と言っていい。しかし、それにも困難が付きまとってくる。

 先ず、欧州諸国にとっては、暫定政権がイスラム過激派化する可能性を捨てきれないために、それなりの圧力が掛けられるかも知れない。しかし、イスラム過激派化しないという見通しが示せれば、欧州からの支援を受けられる可能性はぐっと上がる。

 アラブ諸国との関係は険悪化することが予想される。まるで、フランス革命直後にフランスが周辺諸国から敵視されたように、エジプト暫定政権は、周辺の政権を揺るがすものとしてチュニジア・とトルコ以外の中東諸国から敵視される恐れが有る。或いは、その頃には周辺でも民主化の波が広がっている可能性もあるが、それぞれ環境が違うため、どこでも民主化というわけには行かず、やはり民主化しなかった政権からは敵視されるだろう。

 イスラエルとの関係は、険悪化は必至であると言わざるをえない。イスラエルがパレスチナ西岸地区やガザで行っている暴虐に対して、見て見ぬふりを決め込むことは、民主化した暫定政府には出来ない話である。そのため、最小限に抑えるにしろ、パレスチナ問題に巻き込まれることになり、どう転んでもイスラエルとの対立は避けられない。よって、暫定政権は、イスラエルとの対立が決定的にならないようにし、敵対的ながらも戦争だけは避けるように動かなければならない。

 米国との関係は極めて複雑なものになる。米国自体の利害を考えた場合は、暫定政権がイスラム過激派にならない限り、対立するものではない。しかし、イスラエルの同盟者である米国という立場から言えば、対立は避けられない。よって、米国がどちらの立場を重視するかで、その後の外交的展開が決まるであろう。



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